平成23年3月のことば

 「どこの教えも行き着く所は一緒ですよ」道を歩まぬ人の言うことである  


ついこの前、あけまして~と言っていたと思ったら、あっという間にもう三月。境内の梅も満開になり、あとは春を待つばかりと思っていたら、真冬に逆戻りのような寒い天気が続いています。皆さん風邪など引いていませんか?

何とかお彼岸頃までには、春らしい麗らかな陽気になって欲しいものです。

さて、昨年の秋彼岸のこと。私はご縁に恵まれて、法話をさせていただきに関西に行っておりました。5日間5ヶ所での法話の旅。大阪の阪急梅田駅と言う大きな駅の近くに宿を取り、翌日の本番を控え、早く休みましたが、夜中に物凄い音で目が覚めた。窓の外は、ゲリラ豪雨でありました。

予定の時間より早く出発しようとしましたが外は相変わらずの激しい雨。こんな時の為に、いつもスーツケースには折畳み傘を忍ばせていますが、折り畳み傘は、普通の傘より若干小さい。決してスマートとは云えない私の体に、バケツをひっくり返したような激しい雨。

いざと言うと時の為に用意していた傘が、全く役に立たない。まさか、そのまま小さい傘をさして、びしょ濡れでお寺さんに行く事も出来ませんから、急ぎ近くのコンビニで私の体に合った、大きめのビニール傘を買い求め、土砂降りの中、駅に向かったのであります。

ホテルから駅までは約10分。雨に濡れながら、ようやく駅に着き、改札を通ると、目の前に8つも9つも同じようなホームが並んでいる。田舎者の私には、一体どのホームに行ったら良いか判らない。けれども、そんな私を見通していた友人は、私の為に、駅から最初のお寺さんまでの行き方をちゃんと紙に書いてくれていたのであります。

その指示書によれば、「京都行きの電車に乗れ」と書いてある。1番ホームから順に探していくと「お~ここだ、ここだ」とそのホームが見つかり、足を進めた。

すると今度は、ホームの右側にも左側にも同じ形の同じ色の電車が止まっている。一体どっちの電車に乗れば良いのだ、と又その指示書を見ると「鈍行の電車に乗れ」と書いてある。「よしよし、こっちだこっちだ」と鈍行電車に乗り込み、ようやく梅田駅を出発したのであります。

私が降りる駅は、梅田から7つ目の駅。一つ目の駅を過ぎ、二つ目の駅を過ぎ、次はいよいよ私が降りる七つ目の駅。さぁ次だ!と立ち上がり、ドアの前で降りる準備をしていると、アナウンスされた駅名が、私の目的の駅名と違う!

「あれ、おかしい」と顔をあげ、良く良く路線図を見てみると、私が乗ったこの電車は、始発は一緒でも、途中から別れて、京都とは全く違う方向に行ってしまう電車だったのです。慌てて次の駅で電車を降りて、何駅か戻り、電車を乗り換えて、ようやく目的の駅に着く事が出来たのであります。

 

準備していたつもりの傘も、自分の身の丈、自分の身の程にあったものでなければ、いざと言う時には、何の役にも立たない。

そして、私が乗り間違えたこの電車のように、本当に私に必要なものは何なのか?自分の行き先、その行き方をしっかり踏まえなければいけない。

 

「阿弥陀仏 助け給えと縋るより ほかに頼りの 無き身なりけり」

 

このような歌もありますが、本来であれば、六道の世界をグルグル経巡り続けなければならない私達。こんな私達をお救い下さる仏様は、「わが名を呼ぶものを必ず救い取るぞ」とお約束いただいている阿弥陀様ただお一人であり、そのお救いに預かる為には、ナムアミダブツと称えるお念仏しかありません。

 

夕日が沈む彼方にある西方極楽浄土を想いやすいお彼岸の今月。普段以上にお念仏をお称え下さい。

 

今月末から来月まで、総本山知恩院(京都)をはじめ、各大本山において宗祖法然上人800年御忌法要(ぎょきほうよう:800年のご命日法要)が勤められます。お近くの方は、ぜひご参加ください。

 

〔満開の梅の花と観音堂〕

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