おてらからのおたより  ―平成28年4月のことばー

 「みなこれ予が遺跡となるべし」

榴岡公園の桜も例年より早く咲きました。暦よりも確実に草花たちが長い冬の終わりと春の訪れを教えてくれます。

桜が咲くこの季節、全国津々浦々の浄土宗のお寺で宗祖法然上人のご命日法要「御忌会(ぎょきえ)」が勤められます。

東京の大本山・増上寺では、大僧正に代り導師を勤める唱導師(しょうどうし)と、そのゆかりの僧侶が七条袈裟や袴などの装束を身に付け、行列を組んで練り歩いたのち、ご遺徳をお讃えする法要を行います。数百名の僧侶による練り行列の様子は荘厳で、絢爛豪華な江戸徳川文化が現代に甦ります。立派な装束を身に付けるのは、阿弥陀様をはじめとする仏様方や法然上人に対し最大の敬意を払ってのことですが、当の法然上人は、自らが讃えられることよりも私達の行く末を案じておられました。

亡くなられる数日前、ある弟子から「優れた先徳である弘法大師には高野山があり、伝教大師には比叡山という遺跡があります。しかし、上人には堂宇の一つもございません。上人ご入滅の後、私達はどちらをご遺跡とすればよいのでしょうか」と問われ、「遺跡を一ヵ所に定めてしまうと、お念仏の教えが遍く広まることはない。日本中いたる所が私の遺跡です。なぜならば、私が生涯を掛けて勧めてきたことは、全ての人が阿弥陀様に救われるお念仏の御教えを広めることでしたから、例えそこが粗末な小屋であっても、お念仏の声する所は、みな私の遺跡です」と仰られています。

ご威徳をお讃えし、お墓の前、仏壇の前、台所、ベッドの上、出先などなど、法然上人が望まれたあらゆる場所がご遺跡となるようお念仏をお称えしましょう。                   合掌

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