おてらからのおたより  ―平成28年3月のことばー

 「何事も 人の心と 身になって」

梅の花が咲き誇り、寒い冬がもう間もなく終わることを告げています。とはいえ、花粉症の人には辛い季節を迎えました。

私が花粉症になったのは今から27年前、休暇で石巻に帰省した時でした。丁度、その日は、実家の檀家さんのお通夜があり、父のお供でお通夜へ。大学の授業料の成果を見せてみろと維那(いな・お経の発声役)を仰せつかりましたが、目はかゆいし、鼻はズルズル、ノドがイガイガ・ゴロゴロして、不本意な読経になってしました。悔しさを内に秘めながらお通夜の食事を頂いていると、同席した酒に酔った父の同級生から「何だ、あの酷いお経は!」との言葉を投げかけられました。恐らく見る見る顔色が変わる私を察した父は「うちの倅、花粉症なんだ~」とフォローをいれるも、当時はあまり認知されていなかった頃。「何だそれ?そんなものは病気じゃない、気合で直せ!」との言葉に、「それなら、あなたがなってみろ!」と怒りを表してしまいました。

人の痛みや苦しみ悲しみは、その人だけのもの。たとえ家族や兄弟であっても共有する事は出来ません。しかし、共有する事が出来なくとも共感する事は出来ます。その最たるものが供養の心でしょう。

今月は震災から5年目の月。もう過ぎた事ととらえている人もいるでしょう。けれども、自らが遺族であった時のことを思い出し、亡くなられた方や未だに悲しみに暮れる人々の為に手を合わせお念仏をお称えしましょう。                     合掌

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