おてらからのおたより  ―平成28年6月のことばー

 「念仏は 渇いたこころに しみる慈雨」

紫陽花の花が咲き、間もなく梅雨を迎えようとしています。紫陽花は、花の色が変化することから「移り気」、「浮気」などの花言葉で知られます。いつの頃からこの不名誉な花言葉をつけられたのかははっきりしませんが、その原種とされる日本固有のガクアジサイの花言葉は全く異なり「謙虚」という花言葉がつけられています。また、小さな花弁が寄り集まっている姿から、“団結・和気あいあい”と言った家族の結びつきを表す素敵な花言葉も持ち併せています。 

3月に亡くなられたSさんは、寺の行事に毎回参加され、一昨年の五重相伝会にも家族と共に入行されました。当初は心配された体調も崩れることなく立派に五日間の修業を満行され、その暁に「誓譽(せいよ)」という譽号(法号)をお授けしました。Sさんの“誓い”は、自らも阿弥陀様に極楽浄土へと救われ、長年連れ添われ、先立たれたご主人と極楽でまた一緒になること。生前のご主人と交わされたその誓いを果たすためにお念仏の日暮しをおくられてきました。

突然倒れ意識のない母のために息子さんは、「頑張れ!頑張れ」と励ますのではなく、耳元でお念仏を称え続けたといいます。「何も心配ないけど、ちゃんと親父のところに行けるように…、お迎えをいただけるように…」そう話される息子さんに念仏者として、あるべき姿と心構えを教えられました。

本当は離れたくない、決して別れたくない…。しかし、この世は紫陽花の花のようにうつろいます。

お念仏は大切な方とまた会うことが出来るたった一つの道です。悲しみに涙が枯れた私達に阿弥陀様が施してくださる慈しみの潤いの雨です。                       合掌

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