おてらからのおたより  ―平成27年3月のことばー

「小さな芽 あたたかい光の中で 育ちます」

3月11日が近くなると「前を向いて!」、「共に歩もう」、「未来のために!」というような言葉を良く耳にします。被災地へ寄せられる本当に有難い言葉ではありますが、そのような言葉を重荷と感じてしまう人々もいます。

 震災遺構についての議論が有識者と呼ばれる人々によって行われています。

私の母校でもある石巻市立門脇小学校もその一つです。この小学校は、津波の被害と津波がひき起した火災の被害の両方の爪痕が見てとれる為に残すべきとされています。何もなくなった小学校の周りは、新たな街が構築される予定ですが、家や家族を失った人々が住む新たな街の中心に悲しい辛い思いの蘇る建物があって良いのでしょうか。

 児童74名、教師10名が亡くなった石巻市立大川小学校は、地域住民のアンケートの結果、僅かながら保存する意見が解体する意見を上回る結果となりました。今後、総意をまとめ石巻市に要望するといいます。

仙台市若林区の荒浜小学校は、児童や荒浜地区の人々320名の命が救われた場所です。助けられた人々は、当然残すことを望んでいます。一方で消防団員として荒浜地区の多くの人々を救出しながら、自らはその人々の目の前で流され亡くなった方もいます。お腹を痛めて産んだ息子の死を未だに受け入れられずに苦しんでいる母親にとって、あの小学校は“息子が流され、命を奪われた場所”でしかありません。

未来の人々に地震の怖さ・津波の恐ろしさ・命の大切さを伝えなくてはいけないことは誰もが分かっています。しかし、例え少数であっても、現実に苦しんでいる人がいます。

前を向きたくとも向くことが出来ない人々にこそ、あたたかな心がそそがれるべきではないでしょうか。                     合掌

 


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