7月のことば

 


「心の中に 降る雨に 人の情けが 傘を差す」

 

6月末、慈恩寺本堂にてコンサートが開催されました。

さまざまな法要や写経会、てらヨガ、講演会など、いろいろな催しがある寺ですが、実はコンサートを行うのは初めてのこと。

大通りに面していて人通りも車通りも多くにぎやかな場所にありますから、コンサートには不向きだろうと敬遠していました。

しかし、震災以降、遺族への想いを共有し、共に行動してきたS和尚の強い働きかけに促されて重い腰を上げることになりました。

演者は、S和尚の知り合いのプロクラシックギタリストの西下晃太郎さん。

西下さんは、元々海外で活躍されていた方で、帰国後、震災や原発などによって辛い思い・悲しい思いをされた方々のために何度も足を運ばれ、自らがつま弾くギターの音色を〝布施″されてきた方です。今回は、ぜひ仙台でもと願い出てくださったのです。

普段、私はクラシックギターというジャンルを聞かないので、2時間近い演奏時間は持つのであろうか?来てくださる方は慈恩寺がうるさくて折角の機会を台無しにしてしまうのではないか?などの不安がありました。しかし、演奏が始まると、そんな杞憂はすぐに消え失せ、西下さんの描く世界にどっぷりと引き込まれていました。

アイスランドの曲が演奏されると行ったことのないアイスランドの景色が脳裏に浮かび、キューバの曲が演奏されると行ったことのないキューバの景色が浮かぶといった具合です。

脳裏に浮かぶ様々な情景は、いつしか震災が起きてから今日までのことへと移り変わり、気付けば涙が頬を伝っていました。隣で聞く妻も司会をしていたS和尚も同様でした。

きっと、西下さんがギターに込められた想いが、被災者や私たちの心を潤してくれたのでしょう。まるで乾ききった大地にやさしく水が潤ってくるような感覚でした。

「心の中に 降る雨に 人の情けが 傘を差す」

降る雨を避けることは出来ないけれど、傘を差し出すことは出来る。どんな傘を差し出せるかは分かりませんが、小さくとも、変な形であろうとも傘を差しだせる。例えそれが目に見えない傘だとしても。

いつもそのようなお互いでありたいですね。        合掌

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