おてらからのおたより  -平成29年1月のことばー

 「笑顔も 大きな 施し」

ナムアミダブツ 新たな年を迎えることが出来ましたこと、お慶び申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 昨年を振り返りますと、熊本や鳥取の大地震や台風による災害、目を覆いたくなるような凄惨な事件、芸能界やスポーツ界のスキャンダルなどなど。例年にも増してザワザワと落ち着かない一年でした。

一方、新年の慈恩寺は、水仙の花と香りに彩られ、穏やかな新春を迎えています。それは毎年、年末になると寒い日が続く東北に“わずかでも春のおもむきを”と春に咲く水仙の花を友人が届けてくれるからです。あたたかな友の想いのお蔭で、豊かでおだやかな気持ちにさせてもらえます。

 一昨年から、近所にある榴岡小学校の「弟子入り留学」を受け入れています。弟子入り留学とは、小学4年生の児童たちが4~5人のグループになり、地域にある商店や企業・ホテル・神社・寺などに文字通り弟子入りし職場体験をするというものです。慈恩寺にも昨年の9月に可愛らしい弟子たちが来てくれました。

子供たちが寺に来ると、まずはお念仏の意味やおつとめの仕方を教え、さっそく阿弥陀様に向き合いおつとめをします。

おつとめを終えると、ほうきを手に寺の外の歩道を掃除しますが、これはゴミを捨てる人ではなくゴミを拾う大人になって欲しいから。そして、自分のためではなく人のために役立つ喜びを知って欲しいからです。

歩道を行き交う人々に「ご苦労さま」「ありがとう」と声を掛けられると、初めは戸惑っていた子供たちも段々と感謝される喜びを実感じているように見えます。

休憩後には写経を行います。心を鎮め一心不乱に打ち込める写経は、とかく騒がしい現代が反映されているのか、様々な体験の中でも一番良かったとの意見も耳にします。

その後、昼のおつとめをし、持参したお弁当を一緒に食べます。

お母さんに作ってもらったお弁当を眺め、「私達の命は様々な命をいただいているから生かさせて頂いているんだよ。だから心を込めて『いただきます』と言わなきゃいけないね」と話すと、子供たちは神妙な面持ちでいただきますと発声してくれます。

その後、阿弥陀様に感謝とお別れのおつとめをし、終了証を渡し、弟子入り留学が終わります。

今年の弟子入りでのことでした。事故もなく子供たちを見送り一安心していると、本堂のチャイムが鳴りました。誰だろうと玄関へ行くと、忘れた傘を取りに来た子供たちでした。傘を渡し、再度子供たちを見送り玄関を閉めようとすると、外の砂利に何か文字が書かれていることに気付きました。良く目をこらして見ると、そこには「ありがとう」の文字が書かれていました。素直で純粋な弟子たちの行動に親方である私が危うく泣かされるところでした。教えているつもりが、子供たちから何か大切なことを教えられた気がします。

一足早い春を送ってくれる友の心遣いも弟子入りに来てくれた子供たちの心温まるありがとうの言葉も仏教の修業の一つである布施の行いです。

自らの心の潤いだけを求めるのではなく、相手を思いやり、笑顔やあたたかな言葉をかける。そんな素敵な一年にしたいものです。                              合掌

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