10月のことば


 

出る穴の あるに障子の トンボかな

三陸の秋の風物詩である秋刀魚や戻りガツオが美味しい季節を迎えました。野に目を向けても梨や柿、りんご、芋や栗など、馬じゃなくともついつい肥えてしまいます。秋空に真っ赤なトンボも映えます。

ドアや窓を開けていてトンボが部屋の中に入ってくることがあります。早く外に出してあげようと、開いている窓の方へと誘導しても誘導にあがらい、トンボはなかなか外に出て行ってくれない。そんな経験を一度や二度したことはありませんか?

 

夏真っ盛りであったある日の早朝、境内に咲く蓮を見に来た70代と思しき女性と話をする機会がありました。

聞けばこの方は、12歳だった一人息子さんを亡くされているとのこと。亡くなられた理由などは聞きませんでしたが、「大変なお別れをされましたね」とだけお声掛けしました。

話しの中でご婦人は、「私は人が死んだら〝無〟になると思うの」と自らの死生観を話されました。その後も何度も何度も、「人が死んだら〝無〟になる」との言葉を口にされます。

悲しみを慰めるためなのか・・・、世の不条理を納得させるためなのか・・・。

「ここのお寺は浄土宗のお寺でお念仏を称える宗派なんです。ナムアミダブツとお念仏をお称えし、阿弥陀さまに極楽へ救い摂っていただけるのですよ。お念仏を称えることで、先立たれた方も称える私も残す人も共に救われ、極楽でまた会える教えなんですよ」とお話ししましたが、全く耳を貸すこともなく寺を後にされました。

寺の境内まで足を運ばれたのに・・・、阿弥陀さまのすぐそばまで来られたのに・・・。ご自身の経験や知識などが邪魔し、仏様の声を聞くことができない、仏様の救いに縋ることができない。とてもとても気の毒に思いました。

今月のことばは「出る穴の あるに障子の トンボかな」

私たちは阿弥陀さまのお救いを、お釈迦様のお示しを、法然上人のみ教えをただただ信じ日々お念仏をお称えしましょう。ナムアミダブツ

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